飛行航跡3 (スポーツマン)

 

何も無い大空に図形を描くパターンフライトでは、ただやみくもに練習しているだけでは中々上達出来ません。

リボン図やアレスティ記号で1つ1つの演技を理解したとしても、実際のフライトでは、その繋ぎ方やバランスが非常に重要になって来るからです。

また、自分で実際にパターン図を描いてみると、その問題点や攻略法などが見えて来て大変参考になります。

 

演技には、大きさ、高度、Rなどに明確な寸法規定は無いので、下の図形だけが正解という訳ではありませんが、考察のきっかけにしていただければと思います。

 

●日本無線航空会 規定演技:スポーツマン クラス

1. 離陸(テイクオフ)

2. 四角宙返り(スクエア・ループ)

3. 1/2 リバース・キューバンエイト

4. 2回ロール

5. ストール・ターン

6. 2回正宙返り(ツー・インサイド・ループス)

7. 1/2スクエアループ ウィズ 1/2ロールズ

8. 2回逆宙返り(ツー・アウトサイド・ループス)

9. スプリットS

10. コブラロール ウィズ 1/2ロールズ

11. 着陸(ランディング)

 

右風の時のパターン図

パイロット位置から見た時はこんな感じ。

滑走路にある白い点は等間隔に置かれた目印です。

 

演技面の位置は色んな条件によって異なってきますが、一例として、図の様なタテヨコ150m×300mの演技面を考えてみる事にします。

この演技面はパイロット前方86.6mで、フルサイズ機の半分程度のスケールになります。

図中の小さい緑色の図形は高さ10mの竹やぶを表していて、通常の水平飛行の高度はとりあえず作図し易い事から25mとしてみました。

 

 

●四角宙返り(スクエア・ループ)

正方形を描きます。

図形の大きさは任意で、大きい方が良いとか、コーナーを小さく回った方が高得点になると言う事はありません。

大きすぎると次の「1/2 リバース・キューバンエイト」を行うスペースが無くなってしまうので、パターン全体のバランスも考える必要があります。

演技のチェックポイントについてはまた後で纏めてみるつもりですが、1点だけ記しておくと、4つのコーナーの半径を同一にする事が大切となります。

 

●1/2リバース・キューバンエイト

演技の内容は1/8ループ、45°上昇ラインで1/2ロール、5/8ループです。

1/8ループと5/8ループのRのは等しく、ロールの前後には必ず直線が入ります。

ターン演技では高度修正が認められているので、図右の様に、入りと出の高さを変える事も可能です。

ただ、あまり極端な変化は、滑らかさや演技の大きさの点で減点されかねないので、程々にしておくのが無難でしょう。

 

普段何気なく行っているターンと違って、実際に作図してみるとかなり横長になるのに驚くと思います。

早めに引き起こしを始めないと、すぐにフレームアウトしてしまいます。

45°は意外に浅いので、頂点の高度はそれほど高くはなりません。

図を見れば解る様に、 スクエア・ループを相当小さくしない限り同じ高さにはならないので、もしスクエア・ループと同じ高さまで行っているとしたら、それは完全に図形が歪んでいる証拠となります。

青線で描いた様な大きい四角宙返りでは、抜けと繋ぎの水平飛行が短くなってしまいます。

四角宙返りの開始と終了を何処と捉えるかという問題もありますが、演技の前後には必ず水平飛行が必要なので、その事を考えながら演技の大きさきを決める必要もあります。

 

● 2回ロールからストール・ターン、及び2回正宙返りまで

 

・2回ロールは直線として表現されるだけなので、航跡図での面白味はありませんが、とにかく波打ちには気をつけたいものです。

超低空でやったからといってボーナス点はつきませんし、 次のストール・ターンで高度調整しても減点されない事になっているので、慣れないうちは安全な高度で行った方が良いかもしれません。

ただ、単純なパターンでの大幅な高度調整は、やはりどこかに欠点があったと見なされてしまうので、程々に。

 

・ストール・ターンは頂点のターンだけが演技ではありません。

水平飛行で始まって水平飛行で終わりです。

入りと出のRは同じ。

頂点のターンは重心位置を中心に回り、翼端を中心に回った場合は1点の減点になります。

ターン後は垂直上昇したラインと同じラインを引き返します。

 

・ループの大きさは他の演技とのバランスを考えれば、自動的に図の様な大きさになります

 

●1/2スクエアループ ウィズ 1/2ロールズ、から、2回逆宙返り(ツー・アウトサイド・ループス)、 〜スプリットS、 〜コブラロール ウィズ 1/2ロールズまで

 

・1/2スクエアループ ウィズ 1/2ロールズは、一番最初に行った四角宙返りの大きさが目安になります。

上辺で行う1/2ロールは開始前に直線が必要で、直線が無いとF3Aの基準では3点の減点になります。

 

・2回逆宙返り(ツー・アウトサイド・ループス)は2回正宙返りと同じ大きさです。

機速の変化によってエレベーターの効きが変わったり、上昇中2時の位置あたりから右ラダーが必要になったりと、全体のRを一定にするのは中々難しいものです。

 

・スプリットSは、1/2ロールしたら直に半円に入れます。1/2スクエアループ ウィズ 1/2ロールズの時とは違い、直線が入ると減点です。

かといって、カクッと小さいRにしてしまうのも良くありません。

半円の大きさは、こうして製図していると中央のループと同一が理想的とも思えるのですが…

 

・コブラロール ウィズ 1/2ロールズをそれなりの大きさで描こうとすると、演技間の繋ぎ飛行が短くなってしまうのです。

繋ぎ飛行を長くとると、肝心のコブラロールが小さくなったり、センターがズレてしまいます。

 

その対策の1つとして、スプリットSの半円を図の細線の様に若干小さめにすれば、余裕は生まれるのですが、あまり小さい半円では、演技全体の統一性やバランスが崩れてしまいます。

 

なら、この半円を基準として最初から演技の大きさを組み立て直すという手も考えられますが、それだと、全ての演技が小さく、迫力もなくなってしまいます。

 

演技に「正解のお手本」というのはありませんが、結局、この辺を如何に上手く纏め上げるかが、パイロットの技量という事になります。

 

コブラロール ウィズ 1/2ロールズはダラダラとやっていたのでは形にならないので、

水平、1/8ループ、直線、1/2ロール、直線、1/4ループ、直線、 1/2ロール、直線、 1/8ループ、水平、

と、1つ1つのパーツをしっかりと表現するのが大切になります。

 

自分では、コーナー、直線、ロールと、けじめをつけて飛ばしているつもりでも、他人にそれが伝わらなければ意味がありません。

 

例えば、「一定のR」とは、直線とコーナーの境には接点という瞬間点が存在し、「ロールレートが一定」とは瞬間的な運動開始や停止があるべきです。

無論、実際には慣性があるので瞬時の変換は無理ですが、出来るだけそれに近づけるのが理想ではないでしょうか。

 

地上を走る乗用車のコーナーリングでは徐々にステアリングを切り込んでいくのが同乗者にも優しいのですが、これとは全く別の操舵が要求されるのです。

 

実機の動画やtwitterなどの中には「クリスプさ」という表現もありますが、きびきびした歯切れの良さを目指している事が分かります。

 

F3Aの審査基準の中には「滑らかさ・優美さ」という項目があり、解釈の仕方によっては「クリスプさ」と矛盾しかねませんが、演技の一番はまず「正確さ」です。

 

車のステアリングの様にゆっくり切り始めてゆっくり戻したのではRが絶えず変化しているので大幅減点です。

ロールにしても、切り始めや止め際でロールレートが変わったら、変移点の角度によって1点/15°ルールで減点になります。

 

「滑らかさ・優美さ」というのは、ループが節くれ立った多角形になったり、ロールレートが途中で変化した時に適用されるべきものでしょう。

 

●離陸

スポーツマンには離着陸も演技科目に入っていましたね。

離陸演技は、「停止〜滑走離陸〜緩やかな直線上昇〜90°旋回」ですが、旋回後に翼を水平に戻すまでが演技です。

ピタッと水平に戻す事を忘れない様にしましょう。

車のステアリング操作とは違った「演技の為の操縦をするんだ」という気合いをしっかりと見せたいものです。

 

上昇角度に何度という規定はありませんが、90°旋回して演技面に達する頃に基準高度にしようとすれば、約10度となります。

10度は結構浅い角度です。

時計の秒針1秒が6度なので、上昇角10度は、秒針2秒以下です。

上昇中、この角度が変化しない様気をつけましょう。

 

2輪式でメインギヤが短く地上静止角が小さい機体は、スピードをかなりつけないと離陸できません。

これだと、ひとたびメインギヤが地面を離れるとテールを下げるつっかい棒が無くなるので、急角度で上昇してしまいます。

「緩やかな直線上昇」とは到底言えず大幅減点となってしまうので、特に注意が必要です。

 

● 偏流修正角 (WCA)

室内と違って、屋外でのフライトは絶えず風の影響を考慮しなければなりません。

実機の場合、飛行コースが横風に流されないように機首の向きを補正する事を「偏流修正角をとる」と言う様ですが、F3Aパターンで図形を描く時にも全く同じ操作が必要になります。

F3Aでは「機体の姿勢でなく、重心の描く航跡」が重要視されるからで、ヨー方向だけでなくピッチ方向に関しても同じ事が言えます。

例えば、風の中でスクエア・ループを描く時、図左の様に、垂直姿勢のまま上昇・下降したのでは図形が変形してしまいます。

図形を正確に描く為には、図右の様に、機首の向きをずらして飛ぶ必要があります。

「偏流を取る」と耳にする事もありますが、「偏流修正角を取る」の略ですね。

 

この図はヨー方向に関する事で、「垂直面」を上下している時と見ても良いですし、「水平面」を飛行している時、と見る事も出来ます。

 

偏流修正角を取っている時は、ラダー(又はエレベーター)を切りっぱなしにしている訳ではありません。

切りっぱなしにしていれば円弧を描いてしまいますからね。

そうでは無く、機体がそう言う状態を維持する様にコントロールをするのです。

 

ついでに言えば、ナイフエッジ飛行でテールを下げるのも、航跡が正しければ何の問題もありません。

ナイフエッジ・ループともなれば、更に角度が深くなるのは当然です。

 

ナイフエッジ飛行でどれくらいテールを下げるかは機体の性質によるので、点数には影響しませんし、減点してはいけません。

細かい事を言えば、通常のフライトでも、機種や飛行スピード、正面、背面によって機軸の向きは変わっているので、それと同じです。

あくまでも重心の描く航跡が重視されると言う事です。

 

時代とともにナイフエッジ飛行の性能がアップし、もし、ナイフエッジでテールを下げない機体になったらどんなでしょう?

ウラもオモテも、まして、ヨコになっても同じに飛ぶ飛行機なんて…。

 競技機としては理想かもしれませんが、何か味気ない感じもしそうです。

 

●チェックポイント---四角宙返り

 

四角宙返りに限った事ではありませんが、上昇と下降ではほとんどの機体が図の様にアップ癖となります。

これは通常のエレベータートリムを、「水平飛行でほんの微かに頭下げ、背面では適度のダウン打ちが必要」としているからで、 このため色々な調整方法を取っても結局はアップに行きたがってしまいます。 

いつも同じ演技ばかりやっているとこういった癖に慣れてしまい、垂直とはこんなもんだと放置してしまいがちです。

ところが、その癖を持ったまま違う演技をやってみると、あまりにも良く飛ばないのに驚いてしまう事があります。

 

例えばFパターンなどは背面抜けが多く、この影響がモロに現われてしまいます。

 

同じ事の繰り返しではどうしても甘えが出てしまいます。

いつもスポーツマン演技をしているならもう少し複雑な演技を試みるとか、或いは、PパターンがメインならFパターンや、基本に戻ってスポーツマンをしてみるとか。

色々な事にチャレンジしてみるのが技術向上には大切です。

 

●チェックポイント---45度ライン

45度は、水平・垂直と違って目安になるものが自然の中に存在しませんから、頭の中で充分にその見え方を理解しておかないといけません。

 

スポーツマンの コブラロールでは、45度ラインの延長点は図の矢印↑位置となります。

上限一杯の高い位置での演技でもない限り、↑位置はフレームポールより内側になる事を覚えておいてください。

図にはトライアングルも書き加えてありますが、同様です。延長点が外側になる事はまずありません。

 

↑位置は演技の大きさによって変わるので、自分なりの目標ポイントを決めて練習すると良いでしょう。

 

因に、キューバン8では目標点が図の様になります。

これも演技の大きさによって変わりますが、決してフレームポール位置にはなりません。

トライアングルの時より内側です。

こういう目標点に向かってピタッと飛んでこそ奇麗なラインとなり、感動を与える演技となるのです。

図にはオンコーナーも書き加えてあるので、この45度ラインも研究してみると面白いでしょう。

 

●チェックポイント------ループ・オンコーナーの45度ライン 

 

以前紹介した事がある「新宿 高島屋の画像」にちょっと落書きしてみたのがこの画像です。

 

 

またこの部分については他にも取り上げた事がありましたが、この両方の45度ラインを書き出してみたのが、図の右となります。

立体を平面で表現する時の不正確さはありますが、何れにしても45度ラインの見え方としては、

「下は角度が浅くて短く見え、上は反対に、立っていて長く見える」様になるはずです。

 

人間の目でこの部分の角度を見分けるのは非常に難しいので、自信を持って角度を言い当てられる人は少ないでしょう。

私にも良く分かりません。

ただ、正確な角度が分からなくても、演技の開始と終了の位置ズレや、Rの大きさ、ラインの曲がり、ロールなどは良く見えますから、それほど大きな問題にはならず演技評価は出来るものと思っています。

 

●45度の見え方

ジャッジング・ビデオの25:00辺りに、「45度を斜め後ろから見ると立って見える」と言う風に取れるアニメーションがありますが、見る人に誤った認識を植え付けてしまうものとなっているので、注意が必要です。

 

ビデオでは、まず、三角形を表示しておいて、

 

それを回転させています。

これを見る限り、確かに45度ラインは立って見える様になります。

 


一見、なるほどと思いがちですが、これには「無限遠に視点を置いた概念図であって、パイロット目線で描かれたものでは無い」という大きな問題があるのです。

 

パイロットからすれば、遠いものは低く見えなければならず、三角形を回転させた場面は、機体がこの画面の斜め奥の方に飛んでいるだけとも取れ、引き起こし開始点の表現が画面全体に対して曖昧になっています。

また、機体がパイロットより高い位置を飛んでいる事も考慮されていません。

つまり、この説明図には不都合な点が多すぎるのです。

 

実際にリボンをカメラで捉えてみるとこんな感じになります。

ただ、これもある瞬間を捉えただけの画像なので、3次元空間を正確に表現できている訳ではありません、が、ビデオのアニメーションよりはよっぽど現実的です。

 

立体の見え方を平面で表すのは元々無理がありますが、パイロット目線からすれば45度はこんな感じになるのが自然でしょう。

位置によって随分見え方が変わっていますが、ビデオのアニメーションの様には決してなりません。

 

それと大事なのは、この画像ではラインが曲線になっていますが、それは製図上の都合でそうなっているだけで、現実は直線であり、直線に見えなければなりません。

画像の様な弓なりに飛ばす必要は無いのです。

 

ベテランの方が上記ビデオの様な認識を持って解説や指導をしている様であれば、それは完全に間違いで、機体にカメラを載せてサイドビュー動画を撮ってみれば、何が正しいかは直ぐに明らかになる事です。

 

●パターンの見え方

 

観覧車は真円のお手本として、その大きさと迫力から大変参考になるのですが、パターン飛行と比べると水平飛行ラインの低さがちょっと気になってしまいます。

まぁ、観覧車の外周では無く、適当な内輪を考えれば、それはそれで良いのですが…。

それと、いくら参考になると言っても、そんなにしょっちゅう観覧車を見に行く訳にもいきません。

 

そこで、パターンの見え方を簡単な方法で再現してみる事にしました。

用意したのはまず、パターンの設計図とも言える図面。

このページ上部のものとは少し変化させています。

なるべく大きい紙面にして、これをプリントアウトします。

 

 

この上に、紙製リボンでパターンを描きます。

撮影位置は、左右のフレームがちょうど60度に見える所。

この写真では、立っているバルサ板の先端になります。

 

そのパイロット位置とも言える場所から撮ったのがこの画像。

下部のラインが地面、演技面までの距離87m、水平飛行高度34m、直径75mのループの見え方に相当します。

スポーツマン演技なので、安全を見て、高度が若干高めで円が小さめですが、どうでしょう?

リボンの黒色が翼の下面です。 

 

実際のフライトでこれだけハッキリと下面が表現出来ているでしょうか?

もちろん、飛行高度やループの大きさによって違いは出ますが、 自分より高い所を飛んでいる水平飛行では必ず翼の下面が見えなければいけません。

水平飛行の見え方の基本ですから、まず一番に注意が必要です。

 

ループの演技で特に気をつけたいのは次の6つのポイントです。

黄色で示した上下左右のポイントは位置と姿勢の判断がしやすい所なので、しっかりと確認し、ズレを修正します。

翼の見え方が下面から上面に切り替るピンクのポイントも重要です。

これらの各ポイントを正確に押さえ、しかもスムーズに繋ぐ事で完璧な円を描いて行くのです。

 

機体のクセや大気の乱れなど、様々な要因で機体は向きを変えようとします。

無風時なら姿勢を正確にするだけで済みますが、風のある時には、流される分に対するピッチ方向とヨー方向の偏流修正角も必要になります。

それらすべてを押さえ込んでこそ完璧な演技となる訳で、ただ単にアップを引くだけがループではありません。

画像の様な完璧なループを表現するのは、どんなフライヤーでもまず不可能と言っても良いくらいです。

派手さはありませんが、パターンフライトはループ1つとってもこれだけ複雑で繊細な操縦が必要で、だからこそいつまで経っても飽きる事は無いのです。

 

●四角宙返り

四角宙返りの見え方ですが、これを見て、

「なるほど、垂直ラインは上が狭まる様に描いた方が良いのか」

と、早とちりしないでください。

画像はあくまでも真正面を向いて見た時の静止画で、実際に機体を追って眼球が動けば、垂直上昇は次の様になります。

 

つまり、垂直ラインはどんな時も地面に対して垂直に見えるのです。

まぁ、当たり前と言えば当たり前の話ですが。

 

ただ、水平ラインは違います。

遠くへ行くほど下がって見え、特に高空ではその傾きが大きくなります。

四角宙返りの垂直上昇から上辺へ移行する際にはこの傾きに合わせる様にします。

 

降下も、もちろん地面に垂直になる様に、地上の目標点に向かって一直線に進みます。

前項チェックポイントに記した様なアップ癖に気をつけて。

恐怖心との戦いですが、図形後半の大事な所なので、キッチリとラインを出します。

 

●1/2 リバース・キューバンエイト

この画像で特に注目したいのは、45度上昇中の翼の見え方です。

翼の見える量が、水平飛行に比べ少なくなっています。

これが一番のポイント。

 

普段のフライトで、45度上昇中の翼の見える量が多くなっていませんか?

 

もし多いとすれば、

・水平飛行で翼が手前に傾いている

・上昇角度が45度よりも大きくなっている

などの原因が考えられます。

 

ターン位置でのループの見え方については他でも触れているので割愛します。

 

それと、画像の説明からは離れますが、 

実際のフライトではほとんどの場合、上空から見た飛行コースが「へ」の字型になっています。

極端な話、正面前方で宙返りをしていた機体が、ターンは滑走路延長上まで近づいている、という感じです。

演技面を横から見られれば良いのですが、何の手助けも無しにそれは不可能です。

是非対策を考えましょう。

 

●ストール・ターン

地面に対して垂直に上昇させます。

頂点でターンした後、同一経路を戻ります。

ターンを含む垂直部分は、「I」字型の経路が目標で、逆「U」字型では減点となります。

 

垂直の正確さは、上昇中にパワーを絞ればその時傾いている方向に倒れるので、 テールスライド(バック降下)をさせてみる事で確認出来ます。

180度ターンのテクニックも重要ですが、まずテールスライドで完璧な垂直姿勢を覚える事が大切です。

 

●1/2スクエアループ ウィズ 1/2ロールズ

これもストール・ターンの時と同様、地面に垂直に立ち上げる事が重要です。

また、高い位置での水平ラインは写真にするとこんな感じになり、かなり傾いて見えます。

非常に判断が難しいところですが、残念ながらここでの見え方に目安となるものはありません。

「消失点」と「センター高度」を意識したラインに上手く乗せられるかが問題になります。

 

●スプリットS

半円を決定する上下と真ん中の点を黄色で示してみました。

前出のループ・オンコーナーの説明と重複しますが、下半分より上半分の方が長く見えます。

観覧車の写真も同じですが、これが真円の見え方です。

 

各自がバラバラの基準やイメージを持っていたのでは、スポーツ競技は成り立ちません。

先のオリンピックでは、判定に機械が導入され判定ミスを減らす工夫がされていましたが、RCでも、これからはムービーやGPSなど色んな機材の進歩で、図形の判断が正確に出来る様になって来るでしょう。

そうした場合でも違和感が無い様、観覧車の様な真円を目標とするのが一番公正と思われます。

 

●コブラロール ウィズ 1/2ロールズ

スプリットS終了後、きちんと水平飛行を見せてから45度上昇に移ります。

水平飛行が長いとコブラロールの演技空域が小さくなってしまうし、反対に、繋ぎの水平飛行が確認出来なければ前後の演技で減点となってしまいます。

45度の目安は鉛筆の先で示した点。フレームポールの内側です。

降下時は当然この対称位置になりますが、このポイントを意識する事で演技の出来映えが変わって来ます。

パターン演技全体に言える事ですが、機体だけを見るのでは無く、周りにも気を配る技術が要求されるのです。

 

以上でスポーツマン演技は一区切りとしますが、もし疑問点等あればこのページ上部のお問い合わせからお知らせください。

 

スポーツマン演技は、パターン飛行の基本が学べるとても良い演技です。

宙返りをはじめとする曲技飛行は、元はと言えば、機体がどんな状態になってもそこから安全に復帰させる操縦技術を習得する為のもの。

競技会に出るとか出ないでは無く、自分の技術を磨いて安全に機体をコントロール出来る様にする為にも、是非取り組んでみて欲しいものです。

本人が水平と思って飛ばしていても、傍から見れば傾いたまま曲がって飛んでいるのは良く見かける事で、

パターン飛行で学んだ水平飛行や空間認識力は、どんなジャンルのRCフライトをするにしてもきっと役立つ事でしょう。

 

これまで紹介したリボン図と飛行場を合成してみました。

「眼球を動かした時の視界の中央」が「地面に対して垂直」となるので、この画像が正確なパターンを表している訳ではありませんが、見え方のヒントにはなると思います。

( 前に記した様に、四角宙返りを上空で狭めて描く必要はありません)

 

 

 

・補足

撮影で使ったリボンの幅は見易さ重視で広めにしてありますが、実際の機体幅は、この約1/7でしかありません。

そんな小さい機体を操縦し、且つ周りにも気を配らなければならないのですから、パターンを描くのは大変な作業なんですね。

 

 

2012.10.7  チャレンジコーナー

次回、12月2日開催予定の 「2012冬 電動機の集い」 では、チャレンジコーナーを復活してパターンフライトの時間を設けようと思っています。

演技クラスは何でも良いのですが、主にスポーツマンクラスでは、希望があれば採点も行える準備をしておきます。

飛行環境が変わればまた違った発見も出来るもの。腕試し・度胸試しにいかがでしょう。

競技会、検定会参加の練習にもなります。

 

競技会と言えば、以前は、模型店やメーカー、クラブなどの主催でローカル大会が多く開かれていました。

私も、時々そう言った大会の審査員を引き受けたものですが、今ではそんな機会も無くなってしまい残念に思っています。

 

審査員をしてみると感じられるのですが、その1つに、視野の大きさの違いがあります。

パイロットはどうしても機体を中心に神経を集中させなければいけませんが、審査員はもっと広い視野でパターンを観察する事が出来るのです。

地平線を基準に水平ラインを見たり、上のリボン図にある様な鉛筆を使って垂直や45度を確認する事も余裕でできます。

 

ベテランパイロットになるほど機体以外の周り全体も見える様になると思いますが、普段の練習で、そういう広い視野を持てるようにする事も大切です。

クルマの運転に例えれば、初心者のうちはステアリングやペダルに気をとられ進行方向の一点だけしか見られないのが、慣れるに従って、周り全体にも注意が向けられる様になるのと同じです。

大事な所を見ながらも周りも見える。

操縦に余裕が無ければ出来ない事ですが、リボン図の鉛筆で示した所を思い浮かべながらフライト出来れば、素晴らしい図形が描ける事でしょう。

 

2012.10.26

模型は模型なりの演技を追求すれば良いと言う考えもありますが、パターンフライトはやはり実機をお手本にするのが自然であるし、末永く皆で楽しめるのではないかとも思うのです。

極端な話、飛行機がバックする様になっては、もはや別ジャンルですからね。

 

実機デカスロンの演技があったので紹介しておきます。

画面で見ると、大きいRCスケール機が飛んでいる様でもあるし、やっぱり飛行機ならではの味があって良いものです。

 

くろさわさんの動画

Decathlon Aerobatics flight スポーツマンクラス 2012全日本曲技飛行競技会

https://www.youtube.com/watch?v=QvNRoE7-3lw&feature=g-all-u