右サイドスラスト

飛行機に働く力の考察をしてみます。

 

右サイドスラストをつける理由は幾つか考えられますが、その一番は垂直尾翼が胴体の上側にしか無いからです。

 

画像はプロペラ後流のねじれをテープで表しています。

捻れの度合いは当然飛行スピード等によって変わりますが、曲がった流れは胴体上側にある垂直尾翼の左側に当たって機体を左ヨーさせようとします。

それを打ち消すのが右サイドスラストの役目です。

 

これは機体裏側で、裏になっても当然捻れの向きは変わりません。

ただ、通常、テールの下側に大きな垂直安定板は設置できないので、ヨー方向の力もかかりません。

 

もし特殊な形状の機体で垂直尾翼がテールの下側だけにあるなら、右ヨーの癖を左サイドスラストで相殺する事になります。

 また他にも、モーターグライダーで胴体上のパイロンにプロペラがある場合でも、左スラストになる事があります。

 

高翼機の様な「プロペラよりも主翼が高い位置にある機体」では、プロペラでねじられた気流が主翼と胴体の空間によって整流されやすいので、垂直尾翼に当たる流れが真っ直ぐに近付きます。

また、高翼機は機体の空気抵抗の都合でダウンスラストも多めに必要で、このダウンスラストはPファクターによって右ヨーを発生します。

これらの事から、高翼機では右サイドスラストが少なくて済む事になります。 

 

 ここで、エンジンの排煙でプロペラ後流の様子が良く分かる動画がネットにあったので掲載しておきます。

この機体のエンジン排気口は胴体下面の真ん中にあります。

プロペラ後流に捻れが無ければ排煙は真後ろに行くはずですが、地上にいる時や上昇中に、機体の左側に向かっているのが確認できます。(4:00〜あたり)

 

 ネットにはサイドスラストについてこんな動画もありました。

ここではPファクターや反動トルクについても触れています。↓

Pファクターについての事になりますが、

飛行機のセッティングで水平飛行だけを考えてダウンスラスト与えればPファクターを回避できることにはなります。

ただ、それをそのまま背面飛行させれば、上向きのスラストが強くなるためPファクターが余計に働く事となってしまいます。

もしパターン機で大きめのダウンスラストを与えるなら、通常飛行だけなら良いかもしれませんが、垂直上昇や垂直降下、あるいは背面飛行で余計な癖が出て来てしまいます。

どこに的を絞ったセッティングにするのか、パイロットの腕や考え方も影響してくる所です。

 

それと、動画では飛行機にかかる反動トルクについても触れていました。

ミュゼットの場合、翼端にかかる反動トルクの大きさは大体数十グラムから100グラム程度と算出されます。

フルパワー時では無いですが、中速時の強さならトルクロールの時に実感できます。

試しに、脚を手で支えてホバリングさせてみました。

 

主翼があると、ねじれたプロペラ後流が主翼に当たって、そこで本来の反動トルクと打ち消し合うので、捩れの力はそんなに強くは感じられません。

 

主翼を外してもテストしてみます。

捻られる感じや反応スピードに変化があった様にも思いますが、所詮数十グラムの範囲での増減なので、差は微妙な感じでした。